2019年4月現在、ドローンが同じ空間を何機も飛んでいるような状況はほとんどないと思いますが、今後宅配便などの物流領域にドローンが使われるようになると、空をたくさんのドローンが飛び交うようになると考えられます。
その時に、どこもかしこも勝手にドローンが飛んでいては、ドローン同士が衝突してしまう可能性が高まります。
航空機もそうですが、運行する事業者が飛行計画を提出し、衝突しないように管制する仕組みが必要になってきます。
舞台は福島ロボットテストフィールド
2019年4月21日の日経電子版では、ドローンの運行管理システムの開発をJAXA(宇宙航空研究開発機構)やNEC、NTTデータ、日立製作所、ゼンリン、日本気象協会などが進めていくとのことです。
実際に実証実験を進めているのは、福島ロボットテストフィールド。
上記では、福島ロボットテストフィールドでの人材育成を、南相馬市とNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が協力して行なっていく、というものでしたが、今回の運行管理システムも、NEDOのプロジェクトとして2021年度まで進めていくとのこと。
産官が連携して新しい取り組みを進めています。
実証実験では、福島ロボットテストフィールドの縦900メートル、横600メートルの区域に離着陸場を8カ所設けて、最大10機のドローンを同じ時間帯に飛ばして実証実験を実施したそうです。
例えば、申請された飛行計画で飛行経路が重複していると、離陸前に運行管理センターが一方に経路の変更を指示し、迂回する経路にさせてから離陸を許可したのこと。
記事の内容からは、迂回の経路への変更手続きなどを自動でシステムがやったのか、人が経路をシステムに再設定したのか、という詳細は確認できませんでした。まだ、重複確認→迂回指示→経路変更→重複確認→離陸許可といった一連のプロセスを自動で行うという訳ではないのかもしれません。
今後個人がドローンを飛ばす時にはどうなるのか?
将来の勝手なイメージですが、
- 宅配便など自動運転のために使われるドローン専用の空路が用意される
- 個人が飛ばすドローンは、その専用空路には近づいてはいけない
- 近づいてはいけない、というよりも近づけない仕組み(運行管理システム)が作られる
- システムで管理するために、個人のドローンも含めて個体識別番号を運行管理システムに登録・管理・制御される。
といった仕組みが必要になってくるのではないでしょうか。
つまり個人のドローンも、統一されたシステムに登録され、必要に応じて動きが制御される。
なんだか結局のところ管理される仕組みが浮かんできますが、それぐらいのことをしないと、人の頭の上を飛ぶこともあるドローンを安全に活用していくことは難しいのではないか、と個人的に思います。
(また、統一されたシステム上での制御とは別に、個体同士が情報を発信し合って、衝突を防ぐ仕組みも、標準化されながら実装されていくものだと思います。
現時点でも、ドローンには多くのセンサーが搭載されることで、木や壁に衝突することを未然に防いでくれていますが、動いているドローン同士が「このままいくと、衝突するかもしれないので減速します」とか「衝突を避けるために自分は上昇します、あなたは下降してください」といったやり取りをするような仕組みでしょうか。)
産官が協力して標準化を目指している
重要なことは、このシステム(仕組み)づくりをNEDOのプロジェクトとして、JAXAが全体を設計し、NECなどの民間企業が開発していくといった産官連携の形で行われ、近い将来の標準化を目指していることだと思います。さらに、この標準化が日本国内だけでなく、世界での標準化に繋がることが重要です。
ドローンに関する国際標準化作業には、米中だけでなく多くの国が参加しているので、その中でこのような運行管理システムを日本が開発して主導権を握り、国際標準化を目指しているとのこと。これが実現すれば、福島で開発された技術が、世界で使われるようになります。
日本の中で企業同士が協力して、ガラパゴスにはならず、グローバルに通用するシステムが完成する土台は、福島にあるんですね。