YAMAPでの実証実験や、山のわな猟での利用など、普通の携帯電話の電波が届かないところでの活用が期待されているLPWAについて簡単に調べてみました。
特徴は「低電力」「広範囲」
LPWA (Low Power, Wide Area)、LPWAN (Low-Power Wide-Area Network) とは、Bluetoothなどの近距離無線(〜数十m程度)では満たせないカバレッジの無線アクセスの分類。低消費電力、低ビットレート、広域カバレッジを特徴とする。
Wikipediaより(2019年11月時点)
LPWAの明確な定義は定まっていないが、「長距離のデータ通信」、「低消費電流」という2つの特徴を満たしている通信ネットワークがLPWAと呼ばれている
ということで、電力消費が非常に小さく、広範囲に電波が届く無線通信のことを明確な定義はなく一般的にLPWA(Low Power, Wide Area)と呼んでいます。
スマホなどの携帯電話で使われる3G、4Gや、ユニクロのタグなどに使われているRFIDなどに比べると、非常に広範囲です。
誤解を恐れず、特徴をシンプルに比較してみると、以下のようになると思います。
種類 | 消費電力 | 範囲 |
3G、4G | 大 | 大よりの中 |
RFID | 小 | 小 |
LPWA | 小 | 大 |
(※ほかにもBluetoothやWi-Fiなど無線通信はいろいろあるので、どこかのタイミングでまとめてみます)
いくつか、実際に使われている事例を探してみました。
1.YAMAPが山向けの実証実験にKDDIのLPWA端末を利用
登山好きに人気のYAMAPでは、LPWAのGPS機器を登山で使う実証実験を2019年11月に発表し、11月15日から22日まで参加者を募集しています。
山岳地域では、携帯電話の3G,4G回線が届かない場所がほとんどですので、位置情報の取得が難しいのですが、このLPWA技術を使って位置情報をどの程度取得できるのか、実証実験するのだと思います。
ここで使う端末は「 KDDI IoTクラウド ~Pocket GPS~」とあります。
KDDI IoTクラウド ~Pocket GPS~ とは
このPocket GPSという商品ですが、
『KDDI IoTクラウド ~Pocket GPS~』は、『SORACOM Air for セルラー plan-KM1 (LPWA)』に対応した位置情報サービスです。LTE-Mに対応していることにより、低コスト、低消費電力化を実現し、全国のLTE-Mエリア内でご利用が可能です。
https://www.kddi.com/business/mobile/m2m-solution/iot-cloud-pocketgps/ より
ということで、LTE-MというLPWAの規格を使っていて、10分間隔で1日12時間使った場合に、7日間連続でGPSの位置を測定・記録できるとのこと。
こどもの防犯や、スーツケースなど旅行でのロストバゲージなどでの利用が想定されているようですが、今回YAMAPさんの実証実験のように、山岳での用途を考えると、もし遭難した場合などに移動経路をさかのぼることができて遭難救助に役立つことが想定できます。将来的には例えば山岳保険での割引などに繋がっていくかもしれません。
なお、LTE-Mについては通信速度が1Mbpsと高く、VoLTEによる音声通話までサポートされている規格ですが、3GPPで標準化されていて、通信事業者が提供する、いわゆるセルラー系のLPWA規格です。
セルラー系(通信事業者が提供)ではない、非セルラー系のLPWA規格の1つが、次のLoRaです。
オープンな通信規格「LoRaWAN(ローラワン)」を使った鳥獣の罠検知
LoRaWANという規格
いくつかの会社が独自規格を定めている中で、LoRa Allianceという非営利団体がまとめているLoRaWAN(ローラワン)という規格が、日本の企業も多く実証実験に使っています。
LoRaだと、
最大伝送速度:250kbps程度
伝送距離:最大10km程度
ということで、かなり広範囲に、かつ写真も送れる程度の伝送速度が確保できるので、山岳・山林での利用に適していると言えそうです。
鳥獣被害対策罠システムへの利用
シカやイノシシなどの鳥獣被害への対策として罠を設置した場合、いつ罠に掛かったか、が分かると非常に便利です。
LPWAを使うことで、罠に掛かったときのセンサーの反応を罠管理者にメールで通知することができるようになり、無駄に罠を見回りに歩く手間をなくすことができます。
罠管理者にとってみれば、罠に掛かったタイミングが分かるし、無駄に罠を見回る必要もなくなるし、とても効率的なソリューションだと思います。
放牧への利用
牛を放牧したときに、迷子になった牛を探すのに使えるな、と思って調べるとやはりありました。
こちらの方は、脱走を発見するだけでなく、
・疾病の早期発見
・発情の検知
についても実証実験されています。
なるほど、確かに牛が病気になっていれば、草を食べに歩き回る距離が減るだろうし、発情すると独特の行動パターンになるので繁殖タイミングの計りやすさにつながりそうです。
こちらの企業(株式会社GISupply)で他にも紹介されていたのは、
・ウェアラブル端末で、作業員の位置・心拍・体温・転倒などの状態変化を把握し、LoRa技術で情報を転送。
・熱煙センターで、深夜の公共建物や、お年寄りのガスコンロなどでの火災につながる兆候を察知したときにLoRa技術で情報を転送。
など、いろいろなIoT(Internet of Things)機器がありました。まさにIoTを地で行く企業さんですね。
まったく関係ないですが、いつかLoRaWANがCMになったら、女優のローラさんが「ワン!」と言うCMができることを予言します(希望します)。